夏子の酒物語その11

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夏子の酒物語 第11弾です

前回までのあらすじ

兄の葬儀のため実家に戻ってきた
夏子には、新しい出会いが待って
いました。
兄の康男の大学の後輩、草壁という
人物です。
最近康男を頼って、佐伯酒蔵で見習い
を始めるようになったらしく、
東京から戻る夏子を駅まで、迎えに
いく役目を与えられて待っていたの
です。
とても気さくな好青年といった感じ
ですが、心に穴の開いた夏子の心は、
彼に対して、頼もしそうな好青年と
いう印象以上には感じなかったようです。
しかし、この物語での鍵となる人物です
が、それはずいぶん後からわかって
きます。

通夜の席では佐伯家をとりまく人々に
よるちょっとした騒ぎがあったりしま
したが、葬儀は無事終わる事ができた
ようです。
跡取りを失った佐伯家の中で、気丈に
振る舞っていた、康男の妻、和子の深い
悲しみを夏子は知る事になりました。

で、今回はここからです。

葬式も終わり、普段のように一家全員で
食事をする佐伯家の風景です。

ただしまだ二歳の康男の息子隆男とすでに
亡くなっている康男の姿はなく、逆に
夏子がいて、そして康男の妻和子と、夏子
の父と母の4人の食事風景です。

みなさんもこの時の佐伯家の状況を
考えれば、この中で最も肩身の狭い思い
をしているのが、主人を失った和子である
事は、わかりますよね。

そんな時一番和子の立場を救えるのは、
やはり佐伯家の当主の立場である夏子の父
なのです。

普段は厳しく口数も少ない夏子の父が、
食事の後、茶をすすりながら和子に
声をかけます。

その時の情景を再現しますね。

「」内のセリフのみ引用です

夏子の父浩男(以下父)
「和子」

呼びかけられ、食器を盆にのせ
片付けている、和子。
「はい」


「おまえ・・・ここに嫁いで
何年になる?」

和子
「3年です」


「そうか」

ここで、和子につらくあたるのでは
ないかと、援護しようと口をはさむ
夏子の母(以下母)
「なんですかお父さん」

誤解されては、いけないと不器用
ながらあわててやわらかい口調に
なる夏子の父
「いやその・・・康男とどうやって
知り合った」

まだ片付けを続けながら、少し
笑いながら返事をする和子
「もう忘れました」

ここで、めっちゃ気楽に口をはさむ
夏子、この中で一番空気を読む必要が
ない気楽な立場でしょう。
「あたし知ってるわ!
兄さん出張中に食堂で働いてる
義姉さんをナンパしたのよね」
と明るく話す夏子。

昔気質でありいまどきの言葉を全く
知らない夏子の父は、キョトンと
して目を丸くしてます。
「ナンパ?」

こりゃさすがにまずいと思った和子
があわてて、たしなめます。
「夏ちゃん!」

母はなつかしさを思い出すように
語ります。
「そうして康男が和子さんをつれてきて
嫁にするって言った時 父さん目を白黒
させてたわね」


「ああ・・・わしは猛反対した」

夏子がようやく助け船を出します。
「もう昔話でしょ」

かまわず続ける父
「いや・・・わたしは康男に言った・・
都会の軽薄な娘に酒蔵の嫁が
務まるかとな」
「親戚筋もこぞって反対した」
「佐伯と定食屋の長女とでは
つりあうわけがないと・・・」

その時の事は痛いほどわかって
いる和子の表情は曇ります。

そこでようやく話の展開を変える父
「だが和子これだけは言っておく」

和子も大事な話と思い、片付けの
手を止め、父の方へ顔を向ける和子
「はい」

威厳を持って語る父。
「3年間よくがんばった」
「おまえはわしの娘だ」

ふいをつかれたように驚く表情の和子
と、父を敬意をもって見つめる夏子
(今回のイラストのシーンです)

もう一度自分で言葉をかみしめるよう
に話す夏子の父。
「おまえは佐伯の長女だ」
「その事を忘れるな」

和子にとって普段は厳しい顔を崩す事の
めったにない父のあたたかい言葉に
これまでの苦労を認められ、ねぎらい
の言葉をもらえた上に、これからの
佐伯家での立場も、一番力のある父
に認めてもらえた和子は全てを救われた
気持ちになったでしょう。
大粒の涙をこぼしながら返事をします。
「はい!」

とてもあたたかい気持ちになれた夏子
も感じ入ってます。

そんな家族の光景を居間に飾られていた
兄の遺影が見守るように微笑んでいます。

(私の場合、これ書いているだけで
涙がにじんでます💦)

さて食事の後、夏子は遅くまで仕事に
精を出す酒蔵に顔をのぞかせます。
葬式の後すぐに仕事というのは、
珍しい事ではあります。

ここからまたセリフを抜粋しながらの再現
です。

「」内のセリフのみ引用です。

夏子が酒蔵に入ると、機嫌よく蔵人たちが
あいさつしてきます。
夏子は、佐伯酒造の当主の娘なので、彼ら
から見ると、目上の人という事になります。
しかし、夏子も敬意をもって元気よく
あいさつを返しています。

そして杜氏つまり酒蔵の中での一番上の
人物であるじっちゃんだけはため口です。

夏子も気さくに声をかけます。
「おはようじっちゃん
もう甑(こしき)出し?」

甑出しとは、蒸し米ができあがって釜
から出す事をいいます。
それから、広げた布に広げて冷まし
その後発酵させるために麹室へ運んで
発酵させるという事ですね。

充実感いっぱいに、できたての蒸し米
を手にしながら、じっちゃんが答える。
「ああ夏子か のんびりもしとられんでな」
「酒造りが専務への一番の供養さ」

夏子もうなづきます
「うん」

そこでじっちゃんが唐突に夏子に蒸し米を
手渡します。
「ほれ」

「おいしいわ堅くなく
水っぽくない いい蒸し米ね」
蒸し米をおいしそうに口に含みながら
夏子が語ります。
さすがに小さい頃から、利き酒の才能で
まわりを驚かせてきた夏子には、蒸し米
の善し悪しまで、よくわかるようです。

満足そうにじっちゃんが言う。
「わかるか」
「一麹(こうじ)二酛(もと)三造り
と昔から言うが一に蒸し米二に蒸し米
かもしれんなァ」
「ふかし(蒸す事)が酒の善し悪しを
決めるのさ」

ここでいう麹とは、蒸し米を発酵させる
ための大切な菌の事。

そして酛(もと)とは酒母ともいって
麹、仕込み水、蒸米を混ぜた状態で
酵母を加え培養したものです。

造りとはその後の醪(もろみ)を
つくったりする事をいうようです。

さてそん時蒸し米の入ったおけを
肩にかついだ新人の草壁がそばを
通ります。
「あ・・・おはようございます!」
夏子に元気よくあいさつします。
しかし、そのまま足をとめずに
かけ声とともに、小走りで去って
いきます。

草壁の遠ざかる背中をみやりながら
夏子が、たずねます。
「じっちゃん あの人はどういう人?」

にこやかに答えるじっちゃん
「ああ草壁か」
「妙なやつでな」
「なんでもずっと日本中ブラブラ
酒蔵見たり温泉に行ったりしとった
そうな」

「兄さんと同じ大学だって
言ってたわ」
あの夏子を迎えに来た時の事です。

「ああ 10日ほど前フラッとここに
やってきた時は、
専務(兄康男の事)が大はしゃぎ
しなさったっけ」
じっちゃんは酒蔵の天井部屋の階段を
登りながら続けます。
「無口で無愛想だが よくやっとる
自分から見習いをしたいと言い出して
な」

すでに去っていった草壁の方をみやり
ながら夏子が答える。
「そう・・・」

なんと草壁は康男の亡くなる直前の
10日前にやってきたというのです。
なぜ手伝いたいと言い出したのか、
もちろん、康男を慕っていたから、
康男の望みを受け入れたのでしょうが、
それ以上に病気になっていた康男を
助けるために、手伝う事にしたので
はないかとも思えます。

さてじっちゃんに続いて酒蔵の
天井部屋に上がってきた夏子は、
上の柱にくくりつけてある、龍錦の
種籾の入った布袋が吊されている
のを見つけます。
どうやらじっちゃんは、これを夏子に
見せるために、天井部屋に上がって
きたようです。

「あら・・・」

「ああ龍錦だ・・・千350粒の種籾だ」

「まぼろしの米・・・」

「蔵にゃネズミなんていねえが万一の
ことを考えてつるしたんだ」
「春になれば田植えだ
専務の遺志をついて龍錦を復活させるんだ」

「・・・」

夏子はその後しばらく家の中で物思いに
ふけりながら時間を過ごすようになり
ました。
まだこの時は、夏子は東京に戻って
コピーライターの仕事を続けるつもり
ですが、兄の造りたかった酒について
思いをはせているようです。
これは物語にとって大事な夏子の心の
変化だったでしょう。

“「」内セリフのみ
出典:「夏子の酒」
尾瀬あきら著
講談社漫画文庫刊”

今回はここまでです。
和子の佐伯家での立場を救った父の
言葉も印象的でしたが、兄康男の遺志
を継ぎたいというじっちゃんの言葉も
胸につきささる夏子でした。

次回は、夏子が再び東京へ戻るまでの
シーンです。

ではまた次回をお楽しみに(^_-)-☆

 

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