夏子の酒物語その10    兄の妻和子と、兄の後輩草壁

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夏子の酒物語 第10弾です

前回までのあらすじ

夏子は、兄の葬式のために実家に
戻ってきます。

大切な跡取りを失った佐伯家には、
多くの弔問者がいて、夏子も
忙しく過ごしていました。
なんとお通夜には、寝たきり老人
まで、駆けつけて生前の兄がいかに
素晴らしい人物であったかを、出席者
一同思い知る事になったのです。

そんな中、毅然とした態度で、家の
用事に忙しく立ち回る康男の妻和子を
見て、夏子も手伝うが、やはり悲しみ
の色は、和子の顔にはりついたまま
でした。

通夜の席にいない、杜氏のじっちゃんを
蔵の天井部屋の松尾大明神の前に
見つけた夏子は、そこでじっちゃんから
兄の残した大事なものを手渡されます。
それはなんと、兄が病気の身体に無理を
させてまで、探し回っていた、幻の酒米
「龍錦」の種籾だったのです。

さて今回はここからです。
通夜の翌日、葬式の日に蔵で桶を洗って
いる、兄の後輩だった草壁を夏子は
みつけます。

まずはその時の会話を再現します。

以下「」内のみ引用です。


蔵で働いている草壁を見つけた
夏子が声をかける。
「おはよう」

手を止め夏子を見上げる草壁
「あ」

「もう仕事なの?」
「お葬式の日に?」
とがめるわけではないが、困惑した
表情を向ける夏子。

「いかんですか」

問い返す草壁にあくまでにこやかに
夏子は話しかけます
「いえ・・・そうじゃなくて・・・」

「おれ・・・することないし・・・
線香くさいのは苦手で・・・」
「桶洗いはハタラキの役目ですから」

(引用注:ハタラキとは酒蔵で働く
人の中で最もしたの下働きという役割
の事です。)

「え?ハタラキなの?」
「草壁さんは醸造学科を出てるん
でしょ?」

「ささらの使い方は教えてくれません」
「難しいです」

(引用注:ささらとは桶を洗うために
丈を割ったもので、細かく別れた竹
の先が、強くしっかりとあらうために
適しているという事です。)

「でも・・・兄の後輩なんでしょ?」

「ええ・・・」

「草壁さんは兄と仲が良かったん
でしょ」
「兄をよく知ってるんでしょ」

どうやら夏子がいいたかったのは、
佐伯家の跡取りの康男の友達
だから、下働きかせではなく、
もう少し上の格の楽な仕事から
手伝うように便宜を図って
もらえたはずなのに、どうして
下働きをさせられているのかを
問いたかったのでしょう。
これは佐伯家という当主の格が
酒蔵を経営しているから、蔵の
中の人事まで、影響力があるはず
だと思っていたからでした。
夏子は知りませんでしたが、酒蔵
の中での仕事内容や、人事に
ついても一切が、杜氏に任せるの
が昔からの伝統で、酒蔵の中の
事は、当主でさえ口出しできない
という事なのです。

結局夏子の問いかけには答えず。
桶洗いを続けていた、草壁が
一つの桶を洗い終えて、すすいで
から運ぼうととしています。
「うし!」
桶を持ち上げながら草壁が夏子に
話しかけます。
「おれ・・・のんべです」
「今度一杯やりませんか
夏子さん」
と微笑みかけて誘いの言葉を投げかけ
そのまま桶をかついて蔵の奥へ
いってしまました。

夏子はただ見送るだけでした。

さてお葬式は、とどこおりなく行われ
ました。

後片付けをしている最中に、離れの康男
の家で、留守番をさせていた康男の
長男隆男が突然入ってきます。
隆男は、父康男が亡くなったとは知ら
されていません。二歳児なので、知らせ
ない方が良いと判断されたのです。

しかしやはり父になついていた隆男は、
父を探しにやってきたようです。

そこからの会話をまた再現します。

豚の大きなぬいぐるみをひきずり
ながら部屋に入ってきた隆男が
無邪気に尋ねます。
「トータンは?」
「トータンどこ?」
「おチゴト?」

とまどう夏子
「タックン」

「タックン オサンポするの」
「トータンとオサンポ!」
どうやら毎日のように康男は隆男を
散歩に連れていってやっていたよう
です。

夏子がやさしく声をかけてあげます。
「タックンあたしとあそぼ!」

「ナツコいやー!」
だだをこねる隆男です。

そこで大柄の夏子の父浩男が、突然
わって入り、隆男を高く抱き上げ
ます。
「よーし今日はジージとお散歩だ
隆男」
と隆男を顔の前まで持ち上げた浩男が
にこやかに話しかけます。

「ジージいやーっ
トータンとオサンポ!!」

そこで、隆男の母である和子が、浩男に
声をかけます。
「お父さんあたしが・・・」

「いい心配するな」
とどうやら抱きかかえた隆男をそのまま
散歩に連れていく事にしたようです。

「ジージいやーっ」
といいながら、浩男に抱きかかえられた
隆男は、部屋を出ていきました。

そばで様子を見ていた親戚の叔母たちが
隆男を不憫に思っているようです。

「隆男ちゃんたら・・」

「ふびんだねえ」
叔母の二人が、思わず言葉にしている。

そこにお葬式のお礼をするために和子
が正座をして、叔母たちにあいさつを
します。

「おば様今日は
ありがとうございました」

「お疲れ様和子さん
あたしゃあなたに感心しましたよ」
やさしくねぎらうかのように声を
かける叔母の一人。

「はい?」
きょとんとして和子が問い返します。

「葬儀から火葬場まで一度も涙を
見せないでキリッとしてましたね」
「とても立派でしたよ」

「立派だなんて・・・」
謙虚に返す和子。

「がんばってね」
あくまでもやさしく声をかける叔母。

「ありがとうございます
ただ今お茶をお持ちします」
と三つ指をついてあいさつした和子は
部屋を出ます。
地元の名家佐伯家に嫁いだ身の和子は、
親戚にも恭しい態度を崩す事ができ
ないようです。
それだけ、格付けみたいなものが、
しっかりしている家柄のようです。

和子が部屋を出て行った矢先に、
叔母達が、ひそひそ声で話しはじめます。
「そりゃキリッとするのも無理ないわよ」

「なぜ?」

「だつてもし夏ちゃんが戻って養子でも
もらってこせらんなさいよ
おまけに子供ができたりしたら」
「和子さんの立場はどうなるの?」

「あ・・・・」

「佐伯家の嫁といったって康男さんが
生きていればこそでしょ」

「そうねぇ」

「隆男ちゃんが大きくなるまで
キリッとせざるをえないわけよ
和子さんも」
「でも隆男ちゃんがあとを継げば
相続税が1回分浮くでしょ」

「バカね」

なんとまあ叔母たちは、佐伯家の
跡取りをめぐって、身内どうしでの
確執を予感させるような、どす黒い
ウワサ話をしているようです。
しかもそのひそひそ声は意外に大きく
遺影の前に座っていた夏子にもバ
バッチリ聞こえたようです。
顔を曇らせた夏子は部屋を出ます。

廊下を出た夏子は、足を止めて噂話を
聞いていた和子に気づきます。

「いろいろいうわね
おばさんたち」
和子を慰めようと話しかける夏子。

「うん」

「これなのよね」
「あたしが東京に出て行った理由の
ひとつ・・・」
「昔からうんざりだったの
疲れるでしょ?」

どうやら当主を務める浩男の家は裕福で
親戚筋からは、嫉妬される立場にあった
ようです。

「慣れたわ・・・」
と事もなげに、平気な様子で、夏子に
笑って返す和子。

「義姉さん・・」

「年季が入ってるからね」
と奥の部屋に入ろうとするのについていく
夏子。

とそこに夫康男の仕事用のはっぴが
かかっているのを見つけた夏子は
急にふらつきます。
夏子に倒れ込むようにして寄りかかり
ます。

「義姉さん!」

思わず支えながら夏子が声をかけると
よりかかったまま泣きそうになっている
和子でした。
どうやら夫康男を亡くした思いを葬式の
場では、押さえ込んでいたのですが、
康男の着ていた思い出の服を見て、思い
が溢れてしまったようです。』

“「」内セリフのみ
出典:「夏子の酒」
尾瀬あきら著
       講談社漫画文庫刊”

今回はここまでです。
物語に重要な人物二人、草壁と和子が
今回の主役でしたね。
画像には二人とも入れておきました。

次回は、和子が佐伯家でどのような
立場なのかよくわかる場面があります。
それと草壁の人物像も明らかになります。
だんだんと夏子の新しい人生が動き
始めているようですね。

ではまた次回をお楽しみに(^_-)-☆

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